河合隼雄先生の述べられていた簡単にくじけない心得

面白く働く、といっても世の中は大変難しいことも多く、順調にいかない場合も多々あるのが現実である。

何か困難にぶつかるとくじけてしまいそうになるが、そこで踏みとどまれる考え方を日本の臨床心理学の巨匠である河合隼雄先生が述べられていたので、紹介したい。

確か阪神大震災での話だったと思うが、カウンセラーやカウンセラー予備軍の人たちが、被災された人たちの心のケアのためにボランティアとして訪問する人が当時結構あったようである。

それで被災した人たちのところにボランティアが訪問して「大変ですねえ。お気持ちを聞かせてください。」みたいなことを言うと、「お前みたいな若造に俺たちの苦しみがわかってたまるか!」と怒鳴られて追い返されるようなこともあったようだ。

被災して本当に苦しんでる人たちから見れば、あんまり苦労しているようには見えない若い人が、興味半分で自分の気持ちを聞かせろと言っているように思えて、腹立たしく感じる場合もあっただろう。

せっかく善意のつもりでやってきたボランティアの人にとってみれば、「なんでこんなに冷たい仕打ちを受けねばならないのか」という気分になったかもしれないし、すごすごと退散してしまった人もいるに違いない。

でもここで諦めてしまってはいけない、と河合先生は言うのである。

被災者の人たちはものすごいショックを受けており、将来の不安も抱えているので、そうしたやるせない気持ちをのこのこやってきた若いボランティアの人たちにぶつけざるを得なかったのだろう。

そこですごすごと退散してしまっては、「なんて根性のない連中だ。あいつら一体何のためにやってきたんだ」と思われて、お互いに後味の悪い印象が残るだけである。

こうなるとせっかくボランティアに行ったことが逆効果になってしまう。

だからそれを攻撃と受け止めるのでなく、現在の苦しい気持ちを体ごと表現しているのだと捉えるべきだと言うのである。

「ああ、この人たちは自分が受けている痛みの何百倍もの痛みを感じているのだ」という理解が必要なのだ。

そのように捉えれば、ボランティアの人が怒鳴られて感じる心の痛みは、被災して苦しんでいる人たちの心の痛みに通じる架け橋となる可能性があるかもしれないのである。

こうした状況で簡単にくじけないで、被災者の人たちと何とかコミニケーションを取ろうとする姿勢は、勇気を与える手本になるかもしれない。

心のケアというのはそんなに簡単なものではなく、綺麗事を言っているだけではしょうがないことが多々ある。

本当に役立とうと思うなら、厳しい反応にも直面して受け止めていこうという勇気が必要だ。

そのような姿勢、態度、勇気が雰囲気として相手に伝わり、生きていくためのモデルとなったり、力づけと与えることもありうるのである。

人からネガティブな反応が返ってきたり、仕事が行き詰まったように感じた時は、「簡単に諦めるな」という河合先生の言葉を思い出すようにしている。

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